原理原則ゴルフ

戦略と統計の原理/比較

DECADEは何を定量化しているのか——期待打数で読み解く「狙い点」の原理と限界

DECADEは、散布の測定と期待打数の計算で狙い点を決めるコースマネジメントの手法として知られる。土台にあるBroadieの期待打数の考え方を簡易モデルで確かめ、報じられている数字や批判を、出典の種類ごとに区別して整理する。

監修・執筆:原理原則ゴルフ編集部(編集部)

「ピンを狙うな、中央を狙え」というコースマネジメントの格言は昔からある。ここ数年、これを散布の測定と期待打数の計算で定量化した手法として語られるのが「DECADE(ディケイド)」である。本稿は、DECADEの数字や主張を紹介しつつ、その土台にある期待値の考え方を、簡易モデルで確かめる。同時に、DECADE自体についてどこまでが確認でき、どこからが未確認なのかを、出典の種類ごとに区別して書く。

要約

  • DECADEの考え方の核は、「ショットには必ず散布があり、期待打数(平均スコア)が最も良くなる狙い点は、ピンの位置ではなく、散布の大きさとハザードの配置で決まる」という点にある。この土台はMark Broadieの期待打数とStrokes Gainedの研究にある。
  • 簡易モデルでは、散布が小さいほど最適な狙い点はピンに近づき、大きいほど中央や安全側に寄る。この関係はBroadie本人の見解とも一致する。
  • DECADEの独自性は「中央を狙う」ことそのものより、距離別・散布別に定量化している点と、ティーショットでの攻め方にある、と整理できる。
  • DECADE自体の効果を独立に検証した査読研究は、今回確認できなかった。「利用者が1〜4打改善する」といった数字は、確認できた範囲では自社側の主張に由来する。

1. DECADEとは何か

DECADEは、元ミニツアー選手のScott Fawcettが提唱するコースマネジメントの手法である。提供形態は、公式サイト(decade.golf)によればアプリと会員制の講座で、公式ページにはBryson DeChambeau、Will Zalatoris、Keith Mitchell、Webb Simpsonらの推薦コメントが掲載されている。Fawcettの経歴については、NGA Hooters Tourでの勝利歴と1999年の全米オープン出場が確認できた。

名称は、一般に Distance, Expectation, Correct Target, Analyze, Discipline, Execute の略と紹介される。公式ページには略語の定義が書かれていないが、Fawcett本人はポッドキャスト(18 Strong Podcast #358)で、Dはdistance、Eはexpectation、Cはcorrect target、Aは周囲のハザードの分析(analyze)と説明している(自動字幕による確認)。残りのDisciplineとExecuteは、この番組では確認できなかったが、Wicked Smart Golfの4回目の出演回(自動字幕)の冒頭で、司会者が「D=distance、E=expectation、C=correct target、A=analyze、D=discipline、E=execute」と紹介しており、上記の紹介と一致する。ただしこれは司会者の紹介であり、Fawcett本人の定義の言明ではない。同回でFawcett本人は「DECADEの最初のEはexpectation」と述べている。名称の由来は、「注意深く賢い人が自力で理解に到達するまでに10年(decade)かかることを短縮する」という趣旨で語られている。

なお、「DECADE」名義の公式書籍は確認できなかった。解説サイトのscoringzone.netは「公式のDECADE書籍は存在しない」と明記している。理論の統計的な土台とされるのは、Mark Broadieの著書『Every Shot Counts』(2014年)である。日本語の紹介記事にはこの点を取り違えたものや、創始者名を誤記したものもあるため、情報源の選択には注意が必要である。

2. 土台にある原理——期待打数

期待打数とは、ある地点(距離・ライ)からカップに入れるまでに、平均して何打かかるかを示す数字である。Broadieは、PGAツアーのショットデータから各地点の期待打数を求め、あるショットの価値を「ショット前の期待打数−ショット後の期待打数−1」で表した。これがStrokes Gainedである(詳しくは「なぜパット数では実力を測れないのか」を参照)。

狙い点の選択に当てはめると、問題は次のように書き換えられる。ショットの着弾位置は、狙った点を中心とする散布として広がる。各着弾位置には期待打数があるので、散布全体にわたる期待打数の平均を計算でき、その平均が最小になる狙い点が最適である。この計算では、グリーンの外やハザードに落ちた場合の損失が、ピンに寄った場合の得より重ければ、狙い点はピンから離れる。

Broadie本人は自身のサイトのQ&Aで、100ヤード以遠のほとんどのアマチュアにとっては、中央を狙うのが合理的であり、散布が小さい選手ほど狙い点をピンに近づけられると述べている。

池グリーン(横断面)ピン━ 狙いを左へずらす(池に入る山が小さい)┅ ピンを狙う
図: 狙い点と散布の関係(概念図。本メディア作図、数値は含まない)。散布の山が同じ形でも、狙い点をハザードから離すと、ハザードに入る面積が減る。

3. 簡易モデルで確かめる

以下は、原理を見やすくするための教材用モデルによる試算である。実測データではなく、本メディアが仮定を置いて計算した。

設定は次のとおり。左右方向の断面だけを考え、グリーンの幅を24ヤード(中央を0として−12〜+12ヤード)、ピンは中央から右に8ヤードの位置、グリーンの右側は池、左側はラフとする。グリーンに乗った場合の期待打数は、ピンまでの距離(フィート)に応じて1.35+0.025×距離(上限2.1)、ラフに外した場合は2.6、池に入った場合は3.2(ペナルティを含む)とする。着弾位置は、狙い点を中心とする正規分布(標準偏差σ)に従うとする。

散布(左右の標準偏差σ)最適な狙い点(ピンは+8)最適時の期待打数ピン直狙いの期待打数ピン直狙いの損失ピン直狙い時の池の確率
3ヤード(小)+6.51.601.660.06打約9%
6ヤード+3.01.872.020.15打約25%
9ヤード+0.52.052.210.17打約33%
12ヤード(大)−1.52.182.330.15打約37%

この試算から言えることは3つある。第一に、最適な狙い点は散布が大きくなるほどピンから離れる。σが3ヤードならピンのすぐ内側(+6.5)でよいが、σが9ヤードなら、ほぼグリーン中央(+0.5)になる。第二に、ピン直狙いは、この設定ではどの散布でも損失が出る。損失の大きさは0.06〜0.17打で、1ショットあたりは小さく見えるが、ラウンド中に何度も繰り返される。第三に、散布が大きい場合、最適な狙い点は中央からさらに左(−1.5)に寄り、池が絡むホールでは「グリーンの中心」でさえ安全でないことがある。

この結果はモデルの仮定に依存する。数字そのものに意味があるのではなく、「散布の大きさが決まれば、最適な狙い点も決まる」という構造が重要である。実際のグリーンでは奥行き方向のばらつきや、ピン位置ごとの傾斜、ライの違いが加わる。

4. 実例として報じられている数字

以下はDECADEまたはその周辺について報じられている数字で、出典の種類ごとに区別して記す。

内容出典備考
Pebble Beach 18番で、ピン直狙いの期待打数が2.01、ピンの少し右下を狙うと1.92(差0.09打)Elm Wealth解説記事。数値の一次出典は未確認
理想はアプローチの約70%を広い側(fat side)に落とすこと。Tiger Woodsの最良のシーズンで72%Golf.com(2020年)報道
DeChambeauが2020年全米オープンで、グリーンの広い側に落とした割合が79%Golf.com報道
ドライバー1回あたり約0.07打の利得Golf.com報道
100ヤードのウェッジで、3フィート以内に寄る確率は約3%、15フィート超が約43%Lou Stagnerのデータ(Golf.com経由)データ元は別人。DECADE自身の主張ではない
ツアー選手のドライバーの左右の散布幅は約70ヤードFawcettの発言(Golf Digest豪版、2024年)発言
8フィートのパットの成功率は約50%同上発言
8フィートのパットのホールアウトまでの期待打数は約1.5(日々のコンディション補正を入れると1.47〜1.53)。100ヤード地点のフェアウェイは2.8打、400ヤードのパー4は約3.98打Fawcett本人の発言(18 Strong Podcast #358、自動字幕)本人の説明。数値の出典はBroadieらのデータとされるが、一次は未確認
ドライバーの散布幅が約70ヤードなら、到達できる最も遠い障害物の地点から、散布幅の半分(35ヤード)外側を狙う、という例同上本人が挙げた一例。一般則として示されたものではない
Pebble Beach 10番(グリーン幅約17ヤード、右が海)では、グリーン左端近くを狙うのが正しい、という例同上本人が挙げた一例
前ピンでは、クラブの飛距離を2〜3ヤード見誤ると、ショートする確率が約25%余計に増える同上本人の説明。算出根拠は示されていない
Tiger Five:①パー5でのボギー、②ダブルボギー以上、③ピンまで150ヤード以内からのボギー、④3パット、⑤易しいセーブの失敗(アマチュア向けには「2回チップ」に置き換えたと説明)。ツアーで勝つにはラウンドあたり6個以下が目安で、2025年マスターズのRory McIlroyは4ラウンドで16個だったと述べているFawcett本人の発言(Wicked Smart Golf 4回目の出演回、自動字幕。2025年マスターズ直後の回とみられるが公開日は未確認)本人の主張。個数の数え方(例:3パットとダブルボギーが同じホールで重なれば2個)も本人の説明で、独立した検証はない
マッチプレーや2人チーム戦でも、基本戦略は変えない。例外は、2オン可能なパー5と1オン可能なパー4だけ。ストロークプレーでスコア目標を立てることや、リーダーボードを見ることにも否定的同上本人の見解。数値的な裏付けは字幕では示されていない
レイアップは「できるだけグリーンに近づける」が基本。ただしPGAツアーでも200ヤードのパー3の散布は縦に40〜50ヤードに及ぶ。Tiger Woodsはアプローチの約42%を、狙った距離の±5ヤード以内に打っていたと「うろ覚え」で述べている。アマチュアは80ヤードを狙って70ヤードを打てば、かえって80ヤードに寄りやすい、という本人の推測もあるFawcett本人の発言(Wicked Smart Golf 3回目の出演回(自動字幕。2024年秋とみられるが、URLと公開日は未確認))数値は本人が記憶に頼って挙げたもので、出典は示されていない。距離の散布を考慮するという主張の定性的な裏付けにとどまる
パー5を狙う場合は、ペナルティ率が約20%でも、バーディーが増える分、平均スコアは大きく悪化しない場合がある。これは「バーディーを実質的に増やせるほぼ唯一の場面」だとも述べている。ツアーの8フィートのパットは約50%、10フィートは約40%、100ヤードのフェアウェイからの平均は2.8打同上本人の説明。ペナルティ率の損益分岐は計算例が示されておらず、個別のホール条件に依存する
世界ランク1位だった時期のJason Dayは、Strokes Gained: Drivingが3位でありながら、ドライバー20球の散布幅が約74ヤードあった。そのため、左に池があるホールで左を消す方法は、ドローやフェードではなく、散布幅の半分(37ヤード)だけ右を狙うことだ、と説明している。3番ウッドに替えてもフェアウェイに残る確率は5〜7%増える程度で、毎回30〜40ヤード後ろからのショットになる、という説明もあるFawcett本人の発言(Wicked Smart Golf 第1回の出演回〔エピソード#46〕、自動字幕。2022年秋ごろとみられるが公開日は未確認)。同じ数字は運営者によるDECADE紹介動画でも語られている本人の説明。年は司会者が「2014〜2015年」と推測した部分で、測定条件の出典は示されていない。第1回と紹介動画で数字(74ヤード)は一致する
アプローチでは、ショットの長さの一定割合(スクラッチ級以上は5%、一桁ハンディは6%、二桁ハンディは7%と聞き取れる)より、グリーンの縁から内側に狙い点を置く。例:100ヤードのサンドウェッジで、ピンが左端から3ヤードにある場合、5%は5ヤードなので、ピンの2ヤード右を狙う。160ヤードなら5%は8ヤード。これに周囲のハザードの厳しさに応じた補正を加える。Fawcettは、ピンが端から4〜5ヤードの場合、この基準で「外しても縁の2〜3ヤード外」にとどまり、ピンが5ヤード内側の場合にグリーン外10ヤードまでショートサイドに外す事態を避けられる、と説明している同上(第1回、#46)本人が「目安」として語った数字。自動字幕のため、ハンディキャップ別の割り当て(5%・6〜7%)の聞き取りには不確実さが残る。ハザード補正の具体的な値は語られておらず、ティーショットは別に「距離と散布幅で決まる」とだけ述べられている
100ヤードの木の中からのホールアウトは平均3.8打。ボギーはその地点では約80%の頻度で出る水準なので、ボギーによる損失は0.2打にとどまるが、ダブルボギーは1.2打の損失で、ボギーの約6倍になる。バーディーも、ドライブ(約0.2打)、アプローチ(約0.5打)、パットなどが少しずつ積み重なった結果だ、と説明している同上(第2回の出演回〔エピソード#245/246とみられる〕、自動字幕。2024年春ごろとみられるが公開日は未確認)期待打数の考え方を説明するための本人の例。木の中の数字(3.8打)の出典は示されていない
メンタルスコアカード(その打に明確な狙いがあったか、実行時に完全に集中・コミットしていたかを自己申告で記録する指標)の「コスト」は、アプリの利用者全体の平均で約0.54打(スクラッチ以上のハンディキャップ)。Will ZalatorisやMaverick McNealyに記録させたところ、4分の1〜3分の1打だった同上(第1回、#46)自己申告の指標で、本人も「偏りを取り除くのは難しい」と述べている。利用者データの母集団や算出方法は示されていない
本人のQスクール(コーン・フェリー・ツアーの予選)1次では、4日間で18バーディー・約11ボギーの7アンダーで、あと1打で通過を逃した。直前のテキサス・ミッドアマではTiger Five相当のミスが約13個、Qスクールでは8個だった。ただし本人は「バーディーの多くは運の要素もある」「何かが上達したわけではない」とも述べている同上(第1回、#46)本人の1回限りの体験談。因果関係の検証にはならない。数字は本人が記憶と記録を見ながら述べた概数
5ハンディのゴルファーで、フェアウェイ幅36ヤードのホールで中央から15ヤード左を狙うとフェアウェイに乗る確率が62.6%から51.9%に低下Lou Stagner Newsletter #13(Arccosデータ)狙いのずらし幅と結果の関係を実測した例

Golf.comは、200以上の大学プログラムがこのアプリを使用していると報じている。別の媒体(Golf Digest)では「100以上」と数字が異なり、利用校数は出典によって一致しない。

また、距離別に「何ヤード以上ならグリーン中央、それ以下ならピン寄り」といったしきい値や、ファーウェイ幅の目安(60〜70ヤード)を紹介する解説記事は複数あるが、数字が出典ごとに異なる。Fawcett本人の公式しきい値は有料コンテンツ内にあるとみられ(Wicked Smart Golfの回では、本人が「グリーンへの正しい狙い点の選び方が難しい部分で、会員向けの有料部分に置いている」と述べている)、今回は一次で確認できなかった。ただし、Wicked Smart Golfの第1回では、本人がアプローチについて、ショット長の5〜7%を「グリーン縁からの最小の内側幅」とする目安を口頭で説明している(上表)。これは公式表そのものではなく、ハザード補正も含まれていない。上記のポッドキャスト(#358)では、本人は一律の距離しきい値を示しておらず、「中央を狙え」は多くの場面で正しいが常にそうではないこと、狙い点はショットの長さと周囲のハザード、散布の大きさで決めることを、上の例のように具体例で説明している。Broadieの研究についても、170ヤードの奥左ピンの例で最適な狙いはピンと中央の間にあったと述べている(本人による紹介で、研究の原文は未確認)。したがって、これらの数字を「DECADEのルール」として引用することは避ける。

5. 従来のコースマネジメントとの比較

観点従来の助言DECADEの特徴(紹介されている範囲)
グリーン狙い「中央を狙え」「ミスは広い側へ」散布を測り、距離と散布別に狙い点を数値化する
ティーショット「安全第一」ハザード間の幅が十分あれば、ドライバーを積極的に使う方向
ミスの扱い感覚的な「大きいミスを避ける」期待打数の差として、ミスの種類ごとの損失を比較する
実行状況に応じた判断事前に決めた規律に従って実行する

「ミスを広い側に外す」「中央を狙う」という方向性は、DECADEが登場する前から多くのコーチやプレーヤーが実践してきたものである。DECADEの付加価値は、方向性そのものより、散布の測定と期待打数による定量化、そしてティーでの攻め方にある、と整理するのが安全である。

6. 批判と限界

  • 「当たり前」という批判: プロは昔から広い側を狙っており、新しい発見ではないとする見方がある(Golf Digestの報道による)。
  • 実行の難しさ: 理屈の理解は容易でも、実際にその狙いを守る規律とメンタルが求められる(Practical-Golfの解説)。
  • 画一化への懸念: 選手間の戦略の差を縮め、創造性を減らすという指摘がある(Global Golf Post)。
  • 散布の測定: 自分の散布を正確に知るには、トラックマンなどの計測装置か、十分な数のラウンド記録が必要である。外れ値の扱いで結果が変わる。また、アマチュアの自己申告の飛距離は過大になりがちだと報じられている(Global Golf Post)。
  • 効果の検証: DECADE自体の効果を因果的に検証した査読研究(無作為化比較試験など)は、今回確認できなかった。利用者のスコア改善を示す数字は、確認できた範囲では自社側の主張に由来する。
  • 紹介動画の宣伝的な主張: Wicked Smart Golf運営者によるアプリのレビュー動画(URLは参考文献を参照)には、「Zalatorisを世界3,000位から3位に3か月で引き上げた」「自身のハンディキャップが+0.5から+2.5になった」といった主張がある。前者は、Fawcett本人が語る経緯(Zalatorisは高校卒業時に世界ランク約3,300位で、2014年にテキサス・アマチュアと全米ジュニアで優勝、全米アマの予選は3位通過)とも一致せず、後者は本人の自己申告である。いずれも裏付けとなる一次情報は確認できていないため、本稿では事実として採用しない。

なお、Lou Stagnerは、狙いを意図的にずらしても効果が限定的な場面があることを実測で示している(上表の62.6%→51.9%)。これは、狙いを変えれば散布の中心が狙い通りに動く、という仮定が常に成り立つわけではないことを示唆する。

本人が認める指標の限界もある。Fawcett本人はWicked Smart Golf 3回目の出演回(自動字幕。2024年秋とみられるが、URLと公開日は未確認)で、Strokes Gained: Driving(ドライビング)はPGAツアー以外では機能しないと述べ、アプリにも当初3年間は入れなかった(コーチ陣の要望で追加)と語っている。コースごとにティーショットで使うクラブや状況が違うのに同じ基準で比べると、実力を誤って評価するためだという。Strokes Gained: Approachも同様の問題があるとしている。したがって、DECADEの数字を一般のゴルファーに当てはめる際は、本人もプロ以外には慎重である点に留意が必要である。なお、紹介動画では「アマチュアはグリーン中央を狙う場面が多い、特に約130ヤード以遠では」といった助言が語られているが、これは紹介者の一般的な助言であり、Fawcett本人のしきい値として確認できたものではない。

7. 日本での状況

Titleist Japanは2025年5月14日、青島賢吾氏を日本人初のDECADE認定講師として発表している。日本語での紹介は2020年ごろから見られるが、一部の記事には創始者名や根拠データについての誤りがあるため、出典を確認したうえで参照する必要がある。

8. 実践への示唆

  • 狙い点を決める前に、自分の散布の大きさを知る。散布が大きいほど、狙い点はピンから離れるのが期待値上は合理的である。
  • ミスの種類ごとに損失の重さを考える。池やOBのように損失が大きい側を、散布の中心から遠ざける。
  • 狙いをずらす効果は、実際に検証する。ずらした分だけ散布の中心が動くとは限らない。
  • 数字を鵜呑みにしない。有料講座の内容や、出典のない「何ヤード以上は中央」といったしきい値は、自分のデータで確かめてから使う。

9. 本稿で確認できなかったこと

  • Fawcett本人の距離別・散布別の公式なしきい値の表。Wicked Smart Golfの第1回(#46)では、アプローチの「ショット長の5〜7%」という目安は語られているが、ハザード補正の値、ティーショットの基準、パー5のレイアップやウェッジ以下の公式な判断基準は、#358や他の回でも語られておらず、会員向けコンテンツ側は未確認
  • Wicked Smart Golfの各回の公開日。公式ページ(wickedsmartgolf.com/scott-fawcett-decade-golf)には、4回の出演(#46、#245/246、#322/323、#398/399)と話題の要約が載っているが、公開日と動画URLは載っていない。本稿の「2022年秋」「2024年春」「2024年秋」「2025年」は、字幕の内容(本人の年齢、言及された大会など)からの推測である
  • Fawcett本人の発言どうしの食い違い。2014年のテキサス・アマチュアでのZalatorisの優勝差を、第1回では3打、第2回では4打と述べており、自動字幕のため聞き違いか記憶違いかは判別できていない
  • DECADEが採用する散布モデル(楕円、二変量正規分布など)の詳細
  • DECADEの開発年を単一の年に特定すること。Fawcett本人は#358で、2011年のStrokes Gained公開で着想し、2013年の全データ公開で手法が固まり、2014年にWill Zalatorisのキャディを務めて初めて実戦で使ったと語っている(自動字幕による。年の食い違いはこの経緯で説明できる)
  • Broadie『Every Shot Counts』の期待打数表の一次引用と、Broadie(2012)の論文の主張の確認
  • DeChambeauらの採用についての、DeChambeau本人の発言の一次情報(公式ページの推薦者掲載まで確認。Fawcett本人は#358で、DeChambeauにも教え、数か月後にNCAA選手権で優勝したと語っているが、これはFawcett側の説明)
  • DECADE自体の効果についての独立した検証

参考文献・出典

  1. 18 Strong Podcast #358「Scott Fawcett: Lowering Scores Using Course Strategy, Strokes Gained, and Common Sense」(YouTube、自動字幕の書き起こしで確認。公開日は未確認). https://www.youtube.com/watch?v=gxNL2BPG5XY
  2. Wicked Smart Golf「Scott Fawcett DECADE Golf」ページ(第1回#46、第2回#245/246、第3回#322/323、第4回#398/399の4回分の出演の一覧。公開日と動画URLの記載はない). https://www.wickedsmartgolf.com/scott-fawcett-decade-golf
  3. Wicked Smart Golf 第1回(#46、Qスクールの体験談・瞑想などを含む。自動字幕の書き起こしで確認。2022年秋ごろとみられるが、公開日は未確認).
  4. Wicked Smart Golf 第2回(#245/246とみられる。メンタル・ルーティン・練習などを含む。自動字幕の書き起こしで確認。2024年春ごろとみられるが、公開日は未確認).
  5. Wicked Smart Golf 第4回(#398/399とみられる。マスターズ振り返りなどを含む。自動字幕の書き起こしで確認。2025年マスターズ直後とみられるが、公開日は未確認).
  6. Wicked Smart Golf 第3回(#322/323とみられる。オフシーズンの練習・ティーショット戦略などを含む。自動字幕の書き起こしで確認。2024年秋とみられるが、公開日は未確認).
  7. Wicked Smart Golf運営者によるDECADE紹介動画(割引コードの案内を含む。「5つの教訓」を解説する回。自動字幕。URL・公開日は未確認).
  8. Wicked Smart Golf運営者によるDECADEアプリのレビュー動画(会員向け画面の紹介、EliteとFoundationsの2プランの説明を含む。宣伝を兼ねた第三者の紹介で、自動字幕で確認。公開日は未確認). https://www.youtube.com/watch?v=s3OTnn42pjw
  9. DECADE Golf 公式サイト. https://decade.golf/
  10. Broadie M. Every Shot Counts (2014). 著者サイトのQ&A: https://everyshotcounts.com/248-2/
  11. Broadie M. Assessing Golfer Performance on the PGA TOUR. Interfaces 42(2):146-165 (2012). https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1765964
  12. Golf.com. DECADE stats course strategy changing how pros play (2020). https://golf.com/news/decade-stats-course-strategy-changing-how-pros-play/
  13. Elm Wealth. Better Golfer, Better Investor. https://elmwealth.com/better-golfer-better-investor/
  14. Lou Stagner Newsletter #13「Tee shot targets」. https://newsletter.loustagnergolf.com/p/newsletter-13-tee-shot-targets
  15. Australian Golf Digest. Course management expert Scott Fawcett's tips (2024-05-02). https://www.australiangolfdigest.com.au/course-management-expert-scott-fawcett-tips-smarter-golf/
  16. Scoring Zone. DECADE golf system. https://www.scoringzone.net/blog/decade-golf-system
  17. Practical Golf. DECADE: Scott Fawcett. https://practical-golf.com/decade-scott-fawcett/
  18. Global Golf Post. Golf becoming strictly a numbers game. https://www.globalgolfpost.com/more/golf-becoming-strictly-a-numbers-game/
  19. Titleist Japan 発表(2025-05-14). https://page.titleist.co.jp/mediacenter/news-release/golfclubs/250514.html

第3章の試算は本メディアが仮定を置いて計算した教材用モデルで、出典のある研究結果ではない。

よくある質問

DECADEには公式の書籍がありますか?
今回の調査では、DECADE名義の公式書籍は確認できませんでした。提供形態は公式サイトによればアプリと会員制の講座で、理論の土台とされるのはMark Broadieの『Every Shot Counts』(2014年)です。
アマチュアにも効果がありますか?
DECADE自体の効果を独立に検証した査読研究は確認できませんでした。ただし、散布が大きいほど最適な狙い点がピンから離れるという期待打数の考え方は、Broadie本人も「100ヤード以遠のほとんどのアマチュアには中央狙いが合理的」と述べています。
ピンを狙うのはいつ有利ですか?
散布が小さく、ピン周辺にハザードがないほど、狙い点をピンに近づけるメリットが大きくなります。本稿の簡易モデルでは、左右の散布σが3ヤードなら最適な狙い点はピンの少し内側、9ヤードならほぼグリーン中央でした。
自分の散布はどう測ればよいですか?
トラックマンなどの計測装置か、十分な数のラウンド記録が必要です。外れ値の扱いで結果が変わり、自己申告の飛距離は実際より過大になりがちだと報じられています。