クラブの原理/原理解説
スイングスピード練習器は効くのか——重量クラブ・軽量クラブの研究を確認できた範囲で読む
重い・軽いクラブで素振りするとヘッドスピードは伸びるのか。長期の効果を示す研究は確認できず、急性効果の小規模研究とレビューの内容を整理する。
重い棒や軽いクラブで振るスイングスピード練習器は、「数週間で+◯mph」とうたわれることが多い。それを裏づける査読研究はあるのか。本稿はPubMed収載の要旨(Europe PMC経由)を確認し、全文は読めていない。結論は、長期のトレーニング効果を独立に検証した研究は確認できなかった、である。
要約
- SuperSpeed Golfの重量クラブによるウォームアップを調べた12名の研究では、最初のセットでヘッドスピードが2.6mph上がったが、ボール初速は有意に増えず、ミートの効率は低下した(Hébert-Losier & Wardell, 2024)。
- 動的ストレッチにウェイトを足しても、動的のみより優位でなかった(Tilley & Macfarlane, 2012)。
- 重量器具の急性効果の系統的レビューは、結果が相反し、ゴルフを含む競技は研究が乏しいと述べる(Jermyn et al., 2021)。
- 軽いシャフトで速く振れた、という急性の比較はあるが、練習による向上の検証ではない(Yang et al., 2024)。
1. 重量クラブのウォームアップ:1セット目だけ
Hébert-Losier & Wardell(2024, Sports Biomechanics)は、競技ゴルファー12名に、重量クラブでのウォームアップと通常のウォームアップを比べさせた(クロスオーバー)。要旨によると、最初のセットでヘッドスピードが2.6mph有意に増えたが、以降のセットではほぼ有意でなくなった。ボール初速は有意に増えず、効率は低下した。著者らは、効果は最初のティーに限られ、2番ティー以降は取るに足らないと結論している。研究の資金提供や利益相反の記載は、取得した情報からは確認できていない。
2. 動的ストレッチへの「ウェイト」の追加
Tilley & Macfarlane(2012)は、エリート男子15名で、動的のみ、動的+ウェイト、動的+機能的レジスタンスを比べた。動的+ウェイトは、動的のみに対して優位でなかった。ここでの「ウェイト」の具体的な内容は、要旨から確認できていない。
3. 系統的レビュー
Jermyn, O'Neill & Coughlan(2021, Journal of Strength and Conditioning Research)は、重量器具を使った後の急性効果について25研究を検討した。要旨は、結果が相反するとし、ゴルフを含む競技では研究が乏しい(dearth)と書いている。野球の過重バットでは、その後のバット速度の低下などの所見が比較的一貫しているとも述べる。
4. 軽いクラブで速く振れる
Yang et al.(2024, Frontiers in Bioengineering and Biotechnology)は、7番アイアンで、シャフト重量77g、98g、114gの3種を、低ハンディ10名・高ハンディ10名で比べた。要旨では、軽いシャフトでヘッドスピードとボール初速が高く、飛距離が伸び、特に低ハンディ層で顕著だった。ただし、これは1回の比較であり、練習によってヘッドスピードが伸びたかどうかは検証していない。資金提供は未確認である。
5. 選ぶときの確認項目
- 効果の根拠が、査読研究か、メーカーの主張かを分ける。確認できた直接研究は急性で、被験者は12〜20名程度だった。
- 「速く振れた感覚」と、ボール初速・ミート率の改善は別のものである。上の1.の研究では、ヘッドスピードだけが上がり、効率は低下した。
- 重量表記と段階が、自分の体力に合うか。ケガのリスクについては、確認した要旨に記述がなかった。
- 練習器具は、ラウンド中には使えない。規則は練習器具と規則4.3の記事を参照。
ヘッドスピードと初速の関係は、スマッシュファクターの上限の記事で扱っている。
本稿で確認できなかったこと
- 数週間〜数か月の長期トレーニングを独立に検証した研究。
- SuperSpeed Golf等メーカー自身の「○週間で+◯mph」の主張の一次資料。
- 怪我リスクに関する論文の記述(確認した要旨にはなし)。
- Coughlan et al. 2019、DeRenne らのウェイト付きクラブ研究(検索で特定できず)。
- Hébert-Losier & Wardell(2024)の資金提供・利益相反の有無。
出典
- Hébert-Losier K, Wardell GL. Sports Biomechanics 23(6):709-727 (2024). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36112940/(要旨を確認)
- Tilley NR, Macfarlane A. Int J Sports Phys Ther (2012). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23936749/(要旨を確認)
- Jermyn S, O'Neill C, Coughlan EK. J Strength Cond Res (2021). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34341316/(要旨を確認)
- Yang CC, et al. Front Bioeng Biotechnol 12 (2024). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38380262/(要旨を確認)
関連記事:スマッシュファクターに上限がある理由、ヘッドスピード別の飛距離の読み方、シャフトの硬さ・重量・トルクの選び方。
よくある質問
- スイングスピード練習器でヘッドスピードは上がりますか?
- 長期の効果を独立に検証した査読研究は、今回確認できませんでした。確認できたのは、1セット目だけ2.6mph上がった12名の研究など、急性・小規模のものです。
- 重いクラブで素振りすると飛距離は伸びますか?
- ヘッドスピードがわずかに上がる報告はありますが、ボール初速や飛距離の改善とは一貫していません(Hébert-Losier & Wardell, 2024)。
- メーカーが示す「+◯mph」は信用できますか?
- メーカー自社の主張は、一次資料を開けておらず確認できていません。査読研究とは区別して読む必要があります。
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