ルール・用具規定の由来/原理解説
なぜ「体に固定するパット」は禁止されたのか——アンカリング禁止の原理
長尺パターをお腹や胸に突き立てて固定する「アンカリング」ストロークは、2016年1月1日から正式に禁止された。パットの入りやすさそのものではなく、「ストロークの定義」という原理に踏み込んだこのルール改正の経緯を解説する。
規則14-1b、アンカリング禁止の中身
2016年1月1日、ゴルフ規則14-1b(Anchoring the Club)が施行され、パターのグリップ側の一端やその周辺を、直接または「アンカーポイント」を介して体の一部に固定した状態でストロークすることが禁止された。長尺パターをあごや胸に当てて固定する「アンカリング」ストロークや、前腕を体に押し付けて支点を作る「ブローム・アーム」スタイルなどが対象となる。違反した場合のペナルティはマッチプレーではそのホールの敗け、ストロークプレーでは2打罰とされる。
2012年の提案から2013年の正式承認へ
ルール改正に至る経緯は次の通りである。USGAとR&Aは2012年11月、アンカリングストロークを禁止する規則案を発表し、その後3か月間、ゴルフ業界からの意見公募期間を設けた。この提案は、パットの成績そのものが向上するかどうかではなく、「ゴルフのストロークとは、クラブを自由に振って(自由運動として)ボールを打つ行為であるべきだ」という、ストロークの定義に関わる原理的な立場から出されたものだとされる。意見公募を経て、2013年5月20日にUSGAとR&Aは規則14-1bの採用を正式に承認し、施行は3年近く先の2016年1月1日からとする猶予期間が設けられた。
用具規制と行為規制、二つのアプローチ
この猶予期間の長さは、アンカリングストロークを用いるプロ・アマチュア選手に、通常のストロークへ移行するための準備期間を与える配慮だったと考えられる。実際、2011年から2013年にかけてのメジャー選手権では、アンカリングを用いる選手が男子3年連続でメジャータイトルを獲得しており、この技術の有効性そのものが規則改正の議論を後押しした側面があるとされる。ドライバーの体積規制(460cc)やCOR規制が「用具の性能」を制限する規則であるのに対し、アンカリング禁止は「ストロークという行為の定義」に踏み込んだ規則である点で性質が異なる。用具規制と行為規制という二つの異なるアプローチが、ゴルフというスポーツの根幹をどう守ろうとしているかを対比して理解すると、ルールの原理がより見えやすくなる。
よくある質問
- 長尺パター自体が禁止されたのですか?
- いいえ。禁止されたのは長尺パターというクラブそのものではなく、それを体に固定して振る「アンカリング」というストロークの方法です。長尺パターを使うこと自体は現在も認められています。
- 禁止から施行までなぜ3年近くの猶予があったのですか?
- 2013年5月の規則採用承認から2016年1月の施行まで猶予期間が設けられたのは、アンカリングストロークを用いていた選手が通常のストロークへ移行する準備期間を確保するためだったと考えられています。