原理原則ゴルフ

ルール・用具規定の由来/変遷史

距離計はなぜ解禁されたのか——2006年・2014年・2019年の規則の変遷

レーザー距離計やGPS時計は、いまの規則では原則として使える。しかし2006年より前は禁止が原則だった。2006年のローカルルール解禁、2014年のアマチュア選手権での使用、2019年の「原則使用可」への転換を、R&Aの解説とJGAの資料で確認できた範囲で整理する。

監修・執筆:原理原則ゴルフ編集部(編集部)

レーザー距離計やGPS時計でホールまでの距離を測ることは、いまのゴルフ規則では原則として認められている。ところが、この扱いは昔からのものではない。かつては「禁止が原則」で、使うには委員会がローカルルールで許可する必要があった。本稿は、その原則がいつ・どう入れ替わったかを、R&Aの解説資料とJGAの資料で確認できた範囲でたどる。製品の選び方ではなく「規則の変遷史」に絞るので、機種選びは レーザー距離計の選び方 と レーザー距離計とGPS距離計の選び方 を参照してほしい。

要約

  • 2019年より前の規則14-3は距離の測定を禁じ、委員会がローカルルールで許可できる形だった(R&A 2019年改正解説)。
  • JGAの2006年版資料は、その2006年から「距離測定器に限り、ローカルルールで使用を許すことができる」ようになったと記している。
  • R&Aの解説は、2014年からUSGAとR&Aのアマチュア選手権でも使用が認められたと述べている。
  • 2019年、規則4.3で「使える。ただし委員会は禁止のローカルルールを採用できる」へ向きが逆転した。
2006年2014年2019年原則は禁止のまま、ローカルルールで許可できるR&A・USGAのアマチュア選手権で使用可になる原則は使用可、ローカルルールで禁止できる初期設定(デフォルト)の向きが「禁止→許可は例外」から「許可→禁止は例外」へ入れ替わった
図: 距離計の規則上の位置づけの変遷(R&Aの2019年改正解説と、JGA 2006年版資料による整理)。

1. なぜ最初は禁止だったのか

現行規則の考え方が、禁止の背景を逆から説明している。R&Aは2019年の改正理由として、距離を知ることは「規則がプレーヤー自身の技量と判断だけで(またはキャディーの助言だけで)行うことを求めている判断」には含まれない、と述べている。つまり、改正前は距離の測定も、道具に頼らず自分で見積もる技能の一部とみなされていたと読める。JGAの2006年版の資料でも、プレーヤーの援助になるもの、あるいは距離や状況を測る目的のもの(距離測定器、コンパス、水準器など)は使えない用具として並べられている。ただし、原則禁止となった最初の経緯そのものは、本稿の調査では一次資料で確認できていない。

2. 2006年:ローカルルールで許可できるようになる

JGAの「これだけは知ってコースへ 2006年度版」には、上記の禁止項目に続けて「ただし、2006年から距離測定器に限り、ローカルルールでその使用を許すことができるようになりました」とある。同じ資料は、距離のほかに風向きや勾配なども測れる機能を持つ機器で出したスコアは、機能がオフでもJGAハンディキャップ査定用に受け付けないとも書いている。この時点では、許可の対象は「距離だけを測る機器」であり、使うには委員会によるローカルルールが必要だった。

当時の裁定に近い記述としては、「委員会は、距離のみを測る機器の使用を認めるローカルルールを定めることができる」という趣旨の裁定14-3/0.5が2006年4月に新設として掲載されたと、個人ブログ(USGAの裁定の転載)が伝えている。これは二次情報であり、原典のUSGAページは本稿では開けなかった。なお、業界紙Golf Business News(2005年9月28日付)は、この距離測定器の容認を2005年9月に発表し、2006年1月1日の発効と報じている。この記事も二次情報であり、掲載の日付と発効日の関係は原典で照合できていない。

3. 2014年:アマチュア選手権で使えるようになる

R&Aの2019年改正解説は、距離計の使用が広まったことの例として、「2014年から」USGAとR&Aのアマチュア選手権でも使用が認められたと明記している。同じ解説は、導入から10年ほどで使用が世界中の多くのクラブと大半のアマチュア競技に広がったとも述べる。検索結果の要約では、2014年1月にR&Aが、2月にUSGAがそれぞれ発表したとされるが、発表文そのものは開けなかったため、日付は断定しない。

4. 2015〜2016年:「別の機能が付いた機器」の扱いが見直される

JGAは2015年5月26日付けの告知で、R&AとUSGAが同月11日付けのリリースで規則14-3の解釈変更を検討していると伝えた。変更の対象は、許可のローカルルールがある場合に使える機器の範囲で、当時の解釈では「2点間の距離以外の条件を測定できる機能が付いている機器は認められない」とされていた。検索結果の要約では、2016年1月1日から、そうした機能が機器に載っていても、プレー中にその機能を使わなければよいとする運用になったとされる。ただし、この点は規則書や発表文では確認できていないので、「とされる」にとどめる。

5. 2019年:初期設定の入れ替わり

2019年の規則改正で、距離計の扱いは次のように反転した。R&Aの解説は、改正前を「規則14-3b(および付録)が使用を禁じ、委員会がローカルルールで許可できる」、改正後を「規則4.3が使用を認め、委員会がローカルルールで禁止できる」と対比している。R&Aは理由として次を挙げている。

  • 距離は誰からでも得られる公開情報で、多くのコースではスプリンクラーヘッドや杭に表示されている。
  • 許可のローカルルールを採用した委員会が多くなっており、規則そのものにするのが自然である。
  • 許可に「ローカルルールの採用が必要」であることを、クラブやプレーヤーが知らずに混乱する場面があった。
  • 使用を認めることはプレーのペースにも役立つと見込まれ、多くのアマチュア選手権やクラブでそうだった。

一方で、電子機器の使用に抵抗のある委員会が、コース全般や特定の競技で使用を禁じる余地は残された。R&Aの規則4の解説ページでは、現行の規則4.3aで許されるのは「距離や方向の情報を得ること」であり、高低差の測定と、距離情報を解釈して推奨ラインやクラブ選択を得ることは許されず、委員会は禁止のローカルルール(モデルローカルルールG-5)を採用できるとしている。

6. 禁止の仕組みは今もローカルルール

JGAの2022年度文書には、JGA主催競技での適用が示されている。JGAオープン競技の本選は距離計測機器の使用が禁止され(日本シニアオープンを除く)、JGAアマチュア競技とオープン競技予選では使用でき、測れるのは2点間の距離のみである。禁止のローカルルールG-5の雛形は「規則4.3a(1)は次のように修正される:ラウンド中、プレーヤーは電子的な距離計測機器を使用して距離情報を得てはならない」という形である。ローカルルールという仕組みの全体像は、ローカルルールは誰がどう決めるのかで扱っている。

距離の情報を実戦でどう使うか、高低差や風がなぜ規則上は別扱いなのかは、風・高低差・ライによる距離補正の記事と飛距離の間隔とバラツキの記事が詳しい。クラブの長さのようにローカルルールが規則を補完する例は、46インチ規制の変遷史にある。

本稿で確認できなかったこと

  • 2006年より前に距離測定を禁止した最初の経緯(導入年・理由)。
  • 2014年のR&A・USGAの発表文(日付・文言)。USGAのページは403で開けなかった。
  • 2016年の裁定改定の発表文。検索結果の要約のみで、本文は未確認である。
  • 2006年の裁定14-3/0.5の原典。個人ブログの転載では2006年4月の掲載、業界紙Golf Business News(2005年9月28日付)では2005年9月の発表・2006年1月1日の発効とされ、食い違いがある。原典(USGA・R&A)では未確認。
  • 現行年度(2022年度より新しい年度)のJGA主催競技でのG-5の適用。

出典

  1. R&A. 2019 Rules Modernization - Archive Materials(Explanation for Rule Change 30: Use of Distance-Measuring Devices). R&A アーカイブ資料(PDF)
  2. R&A. Rules of Golf, Rule 4. https://www.randa.org/en/rog/the-rules-of-golf/rule-4
  3. R&A. Committee Procedures, Section 8(モデルローカルルールG-5). https://www.randa.org/en/rog/committee-procedures/8
  4. JGA. これだけは知ってコースへ 2006年度版. https://www.jga.or.jp/jga/html/jga_data/mannerbook.pdf
  5. JGA. 距離計測器について規則14-3の解釈の変更の検討(2015年5月26日). https://www.jga.or.jp/news/rules_news/news_detail_10301/
  6. JGA. 2022年度JGA主催競技に適用されるローカルルールについて. https://www.jga.or.jp/jga/html/jga_data/02KYOUGI_NEWS/2022_KYOUGI/localrule.pdf
  7. (二次情報)USGA 14-3/0.5 の転載. https://michaelweening.com/2006/04/10/usga-14-30-5-the-laser-range-finder-approved/
  8. Golf Business News「Distance devices allowed」(2005年9月28日付). Golf Business News(業界紙、記事本文を確認。二次情報)

規則の条文はR&Aの英語版を参照して要約した。日本語版の表現や最新の改定、各大会の条件書は、日本ゴルフ協会等の公式資料で確認してほしい。

よくある質問

距離計は昔から使えたのですか。
いいえ。JGAの2006年版資料によれば、2006年から距離測定器に限り、ローカルルールで使用を許せるようになった。それ以前の規則では使用は認められていなかったと読める。
2019年の改正で何が変わったのですか。
R&Aの解説では、改正前は規則が使用を禁じ委員会がローカルルールで許可できたが、2019年からは規則4.3が使用を認め、委員会がローカルルールで禁止できる形に入れ替わった。
2019年以降も使えない場面はありますか。
あります。委員会が禁止のローカルルール(モデルローカルルールG-5)を採用した競技では使えない。JGAの2022年度文書では、JGAオープン競技の本選が禁止とされている。高低差の測定や、番手・ラインの推奨を得る使い方も、規則4.3aでは認められない。

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