原理原則ゴルフ

ルール・用具規定の由来/原理解説

ローカルルールは誰がどう決めるのか——前進4打・6インチプレース・OKパットの位置づけ

コースでよく聞く「前進4打」「6インチプレース」「OKパット」は、どれも同じローカルルールなのか。ローカルルールを決めるのは誰で、どこまで決めてよいのかを、R&Aの「委員会の措置」セクション8とJGAの和訳資料で確認できた範囲で整理する。

監修・執筆:原理原則ゴルフ編集部(編集部)

「前進4打」「6インチプレース」「OKパット」。コースでよく聞くこれらは、どれも同じ「ローカルルール」と呼ばれるが、性質は同じではない。誰が、どんな範囲で決めてよいのかを、R&Aの「委員会の措置」セクション8と、JGAの和訳資料で確認できた範囲で整理する。個別の速報やQ&Aは扱わず、制度の仕組みに限る。規則を定める団体の成り立ちは USGAとR&Aが2つある理由 を参照してほしい。

要約

  • ローカルルールは、委員会が採用する「規則の修正または追加の規則」で、採用の判断は委員会(コースや競技の運営側)にある(R&A セクション8)。
  • 採用できるのは、セクション8の方針に沿うものだけ。規則を変えたほうがよいという好みだけで規則を修正・無視することはできない。
  • 前進4打と6インチプレースは、モデルローカルルール(E-5とE-3)にひな型がある。OKパットは、ひな型の目次には見当たらない。
  • 規則から大きく外れてプレーするなら、そのスコアはハンディキャップ申請に使えない場合がある。
① ゴルフ規則(R&A・USGA)ローカルルールは「委員会が採用できる」と定める② 委員会の措置 セクション8(ひな型A〜K)認められる種類と文言の雛形。L: 認められないもの③ コースや競技の委員会が採用を決める地域の状況に合うものだけを選び、目的の範囲で調整する④ スコアカード・掲示・サイトなどで周知その競技・コースでは規則と同じ扱いになる
図: ローカルルールが生まれる流れ(R&A「委員会の措置」セクション8の記述による整理)。

1. 誰が決めるのか:委員会

R&Aのセクション8は、ローカルルールを「委員会が、一般のプレーまたは特定の競技のために採用する、規則の修正または追加の規則」と定義している。採用するかどうかを決めるのは、そのコースや競技を運営する委員会である。JGA和訳(2018年の初稿)には、ローカルルールが「その競技やコースでは、ゴルフ規則と同じステータスを持つ」とある。ゴルフ場でプレーするときにローカルルールに従うのは、それが規則と同じ重みを持つからである。

JGAの競技では、JGAが競技ごとに適用するローカルルールを示している。2022年度の文書には、G-5(距離計測機器の禁止)、G-10(46インチを超えるクラブの禁止)、G-11(グリーンリーディング資料の制限)がJGA主催競技にどう適用されるかが書かれている(距離計の規則の変遷、46インチ規制の変遷史も参照)。

2. 何でも決めてよいわけではない:認められる範囲

R&Aは、委員会が採用できるローカルルールを、セクション8の方針に沿ったものに限っている。和訳資料から、主な原則を挙げる。

  • 委員会は、セクション8(とセクション5)で扱う種類の状況や方針に対してだけ、ローカルルールを使うことが勧められる。
  • 一時的な状況のためのローカルルールは、必要がなくなり次第、取り下げる。
  • ひな型の文言を変えるときは、そのひな型で認められる範囲と、述べられた目的に合っていなければならない。
  • 「規則を変えたほうが望ましいかもしれない」という理由だけで、規則を無視・修正するローカルルールは使ってはならない。

セクション8の「認められないローカルルール」は、具体例も挙げている。委員会は罰を免除したり変えたりできない(たとえば不適合クラブ使用の失格を一般の罰に変えることや、動かされた球をリプレースしなかった場合の一般の罰を1打に変えること)。また、ジェネラルエリアの全域でプリファードライを認めることや、フェアウェイのディボット跡から罰なしで救済することは、「球をあるがままにプレーする」という基本原則に反するため認められないとされる。

3. 「前進4打」はE-5:紛失球・OBの代替救済

「前進4打」は通称で、モデルローカルルールE-5(紛失球やアウトオブバウンズの球についてストロークと距離に代わる選択肢)を指すものとして、日本のゴルフメディアで広く紹介されている。E-5は2019年1月から使えるようになり、プレーのペースを促す目的で加えられた。元の場所へ戻らず、球が止まったと推定される地点やOBの出た地点から、ホールのフェアウェイの縁までの間の、ホールに近づかない区域にドロップして2罰打でプレーを続けられる。2罰打は、ストロークと距離の救済(1罰打に打ち直しの距離の損失)に相当するとセクション8の和訳は説明する。

E-5の適用範囲にも限りがある。ゴルファーがカジュアルラウンドや仲間内のコンペでプレーする一般のプレーに適するが、プロやエリートアマチュアの競技会には「妥当ではない」とされる。アンプレヤブルの球や、ペナルティエリアにあると分かっている(事実上確実な)球には使えない。コースの全プレーに使うことも、見通しが利かない特定のホールだけに使うこともできる。つまり、前進4打を採用するのも、どのホールで使うかも、コースの委員会の判断である。「できる」と書くコースと「してください」と書くコースがあることがメディアで紹介されているが、後者が規則上どう位置づけられるかは、本稿では確認していない。元の場所へ戻る罰則の成り立ちは ストローク・アンド・ディスタンスの記事 にある。ペースの観点は、ボール捜索が3分になった理由にもつながる。

4. 「6インチプレース」はE-3:プリファードライ

ボールを拾い上げて置く救済は、モデルローカルルールE-3(プリファードライ)のひな型にある。ひな型では、ボールがフェアウェイの長さ以下に刈られた部分にあるとき、1度だけ罰なしでボールを置き直せるとし、救済エリアの大きさを「1クラブレングス、1スコアカードレングス、6インチなど」から委員会が選ぶ形になっている。「6インチ」は、ひな型で委員会が選べるサイズの一例である。

目的は、大雪・長雨・猛暑などで芝が傷んだり、芝刈りができなかったりする、一時的な異常な状態への対応である。条件が整えば取り下げるのが原則とされ、ストロークプレーのラウンドが始まったあとに施行するのは、残りホールの多い人が長く恩恵を受けるため望ましくないとされる。ハンディキャップ申請用のスコアにできるかは、各国・地域のハンディキャップシステムの規定を参照するよう書かれている。

5. 「OKパット」は別物

OKパットは、確認できた範囲では、ローカルルールのひな型(セクション8の目次A〜L)に該当する項目がない。ストロークプレーでは、R&Aの規則3.3cが「ホールごとにホールアウトしなければならない」と定めており、訂正しないと失格になる。OKパットは、組内やコース・コンペの慣習としてのものと理解するのが妥当で、ストロークプレーで規則どおりのスコアが必要な場面(競技、ハンディキャップ申請など)では、扱いが変わる。ハンディキャップ制度の成り立ちは ハンディキャップ制度の記事 を参照してほしい。セクション8は、ハンディキャップ申請用のスコアを出すラウンドでは規則に従ってプレーすることが求められ、規則から大きく外れて認めた場合はそのスコアを申請できないとしている。

本稿で確認できなかったこと

  • セクション8のJGA和訳は2018年10月の初稿で、現行版の文言との差。英語版の引用はR&A公開ページの要約部分に限った。
  • 「前進4打」という通称の由来と、各コースの「してください」型の採用が規則上どう扱われるか。
  • OKパットが国内のコースで運用されている実態と、日本のハンディキャップ規定上の扱い。
  • マッチプレーでの「コンシード」の条文(本稿はストロークプレーの規則3.3cのみ確認した)。

出典

  1. R&A. Committee Procedures, Section 8(Model Local Rules). https://www.randa.org/en/rog/committee-procedures/8
  2. JGA. 委員会の措置 和訳初稿(2018年10月). JGA 和訳初稿(PDF)
  3. R&A. Rules of Golf, Rule 3(3.3c). https://www.randa.org/en/rog/the-rules-of-golf/rule-3
  4. R&A. 2019 Rules Modernization - Archive Materials(E-5の導入). R&A アーカイブ資料(PDF)
  5. JGA. 2022年度JGA主催競技に適用されるローカルルールについて. https://www.jga.or.jp/jga/html/jga_data/02KYOUGI_NEWS/2022_KYOUGI/localrule.pdf
  6. (二次情報)前進4打には「使っていいよ」と「使ってください」2種類(e-golf). https://egolf.jp/life/63501/

規則の条文はR&Aの英語版とJGAの和訳資料を参照して要約した。最新の改定や各コース・大会の条件は、日本ゴルフ協会等の公式資料と各コースの案内で確認してほしい。

関連記事:ドロップの高さが膝になるまでの変遷。

よくある質問

ローカルルールは誰が決めるのですか。
そのコースや競技を運営する委員会が採用を決める。R&Aのセクション8は、ローカルルールを「委員会が採用する、規則の修正または追加の規則」と定義している。
コースは好きなローカルルールを作れますか。
できない。セクション8の方針に沿ったものだけが認められ、規則を変えたいという理由だけで規則を修正・無視することや、罰を変えることは認められない。
前進4打はどのローカルルールですか。
通称で、モデルローカルルールE-5(紛失球・OBの代替救済)を指すと紹介されている。2罰打でホールに近づかない区域にドロップして続ける選択肢で、プロやエリートアマチュアの競技には妥当でないとされる。

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