ルール・用具規定の由来/変遷史
ボール捜索はなぜ5分から3分になったのか——2019年改正の理由をR&Aの説明から読む
紛失球とみなすまでの捜索時間は、2018年までの5分から、2019年に3分へ短縮された。R&Aが公表した改正理由の説明をもとに、なぜ短くしたのか、何と組み合わせて導入されたのかを、確認できた範囲で整理する。
ボールが見つからないとき、探してよい時間は、2018年までは5分だった。2019年の規則改正で3分になった。本稿は「なぜ短くしたのか」を、R&Aが公表した改正の理由説明に沿って整理する。罰則(ストローク・アンド・ディスタンス)が生まれた歴史は 別の記事 に、紛失球・OB・ペナルティエリアの救済の選び方は 期待打数で比べる記事 にあるので、ここでは探す時間の規則に絞る。
要約
- 規則18.2aは、プレーヤーまたはキャディーが探し始めてから3分以内に見つからないボールを紛失球とする。
- 改正前は5分だった。R&Aは「プレーが途切れず速やかに進むべきだ」という原則との整合を第一の理由に挙げた。
- R&Aは、ボールが見つかるなら大半は最初の3分以内に見つかる、としている。
- R&Aは、紛失球は増えうるが、全体としてはプレーが速くなる、と見込んだ。
1. 規則の中身:「3分」はいつから数えるか
R&Aの規則18.2aによれば、ボールは「プレーヤーまたはキャディーが探し始めてから3分以内に見つからない場合」に紛失球となる。紛失球になると、1罰打を加えて、直前のストロークを行った場所からプレーする(規則18.2b)。見つかったボールが自分のものか確認できないときは、確認のために妥当な時間をとってよく、その時間は3分に含めず、3分を過ぎてもよいと規則は述べている。つまり3分は「見つけるまでの時間」の上限であり、「見つけた後の確認」の時間ではない。
2. 改正前は5分:何が問題とされたか
R&Aの2019年改正解説(改正理由の第25項)は、改正前の規則を「探し始めてから5分以内に見つからないボールは紛失球で、1罰打を加えて前の場所から打ち直す」と書いている。そのうえで、5分では、探している時間そのものより、損失がずっと大きくなりうると指摘した。例として、ティーショットを5分探して見つからず、ティーまで戻って打ち直し、さらに打ち直したボールが止まる地点まで歩き直す場合、全体で10分以上かかることがある、と示している。
探す時間は、後続の組にも影響する。解説は、長い捜索が複数回あると、コース上の全員にとって累積の遅れが大きくなると述べる。5分という長さの由来(いつ決まったか)は、本稿では確認できていない。
3. 3分にした理由:R&Aの説明
解説が挙げる理由は次の4点に整理できる。
- 原則との整合:ゴルフは長い中断なく、速やかに連続して行うべきだという原則に合う。
- 見つかる確率の実感:ボールが見つかるのなら、ほとんどの場合は最初の3分以内に見つかる。
- 全体のペース:紛失球の件数は増えうるが、平均すれば全体として進行は速くなる。
- 暫定球への誘導:捜索時間が3分に限られると知っていれば、見つからないかもしれないと思ったときに暫定球を打つ動機になる。
注意したいのは、2点目の「大半は3分以内に見つかる」は、R&Aの解説に書かれた判断であり、本稿は裏付けとなる統計やデータを確認できていない点である。また、3分への短縮は、同じ改正で入った他のペース施策とまとめて語られている。R&Aの改正概要は、ほかに、探している最中にうっかりボールを動かしても罰がなくなること、「準備ができた人から打つ」(レディーゴルフ)の推奨、ペナルティエリアの扱いの拡張などを、プレーのペースを速めるための変更として並べている。
4. 同じ年に用意された補完策:暫定球とE-5
3分の短縮は、見つからなかったときの負担を増やしうる。R&Aの質疑資料は、これに合わせて、2019年1月から新しいローカルルール(現在のモデルローカルルールE-5)を使えるようにしたと説明している。紛失球やOBの場合に、元の場所へ戻る代わりに、球が止まったと推定される付近からドロップして2罰打でプレーを続けられるようにする選択肢で、ペースを促す目的で加えられた。このローカルルールの位置づけは ローカルルールは誰がどう決めるのか で扱う。ペナルティエリア側の変更は ウォーターハザードからペナルティエリアへの変遷 を参照してほしい。
なお、同じ2019年の改正で、距離計の使用も原則使用可に入れ替わった。これもプレーのペースを意識した変更として説明されている(距離計の規則の変遷)。
5. 実際のプレーでの考え方
制限時間が短くなった結果、「見つからないかもしれない」と感じた時点で暫定球を打っておく価値が増えた。暫定球の手順は規則18.3で、打つ前に「暫定球」と宣言する必要がある(期待打数の記事に整理がある)。なお、3分を数え始めるタイミングや、3分を過ぎて見つかった場合の扱いなどの細かな運用は、競技ごとの条件書やコースの案内で確認してほしい。
本稿で確認できなかったこと
- 5分という時間が規則に入った年と経緯。
- 「ボールが見つかるなら大半は3分以内」とする判断の根拠データ。R&Aの解説に判断として書かれているが、数値は確認できなかった。
- 改正後に紛失球の件数やラウンド時間がどう変わったかを示す公表データ。
- USGA側の改正解説ページ(403で開けなかった)。内容はR&Aの解説資料に基づいた。
出典
- R&A. 2019 Rules Modernization - Archive Materials(Explanation for Rule Change 25: Time for Search Before Ball is Lost、主な変更点、FAQ). R&A アーカイブ資料(PDF)
- R&A. Rules of Golf, Rule 18(18.2a・18.2b). https://www.randa.org/en/rog/the-rules-of-golf/rule-18
- R&A. Committee Procedures, Section 8(モデルローカルルールE-5). https://www.randa.org/en/rog/committee-procedures/8
規則の条文はR&Aの英語版を参照して要約した。日本語版の表現や最新の改定は、日本ゴルフ協会等の公式資料で確認してほしい。
関連記事:ドロップの高さが膝になるまでの変遷。
よくある質問
- ボールを探してよい時間は何分ですか。
- 規則18.2aでは、探し始めてから3分である。3分以内に見つからなければ紛失球となり、1罰打を加えて直前に打った場所からプレーする。2018年までは5分だった。
- なぜ5分から3分に短縮されたのですか。
- R&Aの2019年改正解説は、プレーを長い中断なく速やかに進めるという原則との整合、見つかるなら大半は最初の3分以内に見つかるという判断、全体としてペースが速くなるという見込み、暫定球を打つ動機づけを理由に挙げている。
- ボールが見つかったあとの確認時間も3分に含まれますか。
- 含まれない。規則18.2aは、見つかったボールが自分のものか確認するための妥当な時間を認めており、確認に3分を過ぎてもよいとしている。
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