原理原則ゴルフ

弾道の物理原理解説

球はどう曲がるのか——D-プレーン理論とスピン軸の原理

「フェースが開いているからスライスする」という理解は半分正しく半分不正確である。弾道計測メーカーTrackManが示すD-プレーン理論に基づき、クラブパス・フェース角・スピン軸という3つの要素からボールの曲がりの原理を解説する。

監修・執筆:原理原則ゴルフ編集部編集部

D-プレーンという枠組み

ボールがどちらに、どれだけ曲がるかを決める仕組みを説明する枠組みとして、物理学者Theodore Jorgensenが著書『The Physics of Golf』で提唱し、後に弾道計測器メーカーTrackManのレーダー計測によって実証・普及した「D-プレーン」という概念がある。これは、インパクト時のクラブパス(クラブヘッドの軌道方向)とフェース角(フェース面の向き)という2つの要素から、ボールの初期打ち出し方向とスピン軸の傾き、ひいてはボールの曲がり方がほぼ決定づけられるという考え方である。打ち出し方向(Launch Direction)は、インパクト直後のボール重心の移動方向を水平角度で示したものだが、これ自体は曲がりを表すものではない点に注意したい。

曲がりを生むのはスピン軸の傾き

実際にボールの左右の曲がりを生むのは、スピン軸の傾きである。TrackManの示すデータでは、スピン軸が1度傾くと100ヤードあたり約0.7ヤードの横方向の曲がりが生じるという定量的な関係が示されている。正のスピン軸は右方向への傾き(右利きゴルファーのフェード・スライス)、負のスピン軸は左方向への傾き(ドロー・フック)に対応する。TrackManの立場では、ゴルフのショットの曲がりは純粋な「サイドスピン」によってではなく、「スピン軸が傾いたバックスピン」によって生じるという説明が採用されている。スピン軸が0度であれば純粋なバックスピンとなり曲がりは生じず、傾くほど曲がりが増していく。なお「サイドスピン」という用語自体は、TrackMan独自のスピン軸モデルと、従来の「バックスピンとサイドスピンの合成ベクトル」として説明する伝統的なモデルとで表現の仕方が異なり、情報源によって説明の仕方に幅がある点には留意しておきたい。

スライスの正体はフェース角とクラブパスの「差」

この原理を踏まえると、「スライスを直したい」という悩みは、実際にはクラブパスとフェース角の関係——フェースがクラブパスに対して相対的にどれだけ開いているか——の問題として捉え直すことができる。フェース角そのものが目標より右を向いていなくても、クラブパスに対して相対的に開いていればスピン軸は右に傾き、スライスが生まれる。弾道計測データを見る際は、フェース角とクラブパスの「差」に注目することが、原理に基づいた球筋の理解につながる。

よくある質問

スライスを直すにはフェース角だけを気にすればよいですか?
フェース角単体ではなく、クラブパスとの相対関係(フェース角がクラブパスに対してどれだけ開いているか)がスピン軸の傾き、つまり曲がりを決めるとされています。フェース角とクラブパスの両方を合わせて見る必要があります。
スピン軸は打った後も変化しますか?
TrackManの簡易モデルでは、スピン軸はインパクト直後にほぼ決まり、飛行中は基本的に一定に保たれると仮定されています。ただし実際には空気抵抗などの影響で若干変化する場合もあるとされています。