コース設計の原理/原理解説
朝と午後でグリーンの速さはなぜ変わるのか——USGAの記述で「午後は速い」説を確かめる
「朝は遅く午後は速い」という通説に対し、USGAの記事は測定値では午後に遅くなる傾向を示す。一方で、硬さによる体感の違いも指摘されている。確認できた記述を整理し、確認できなかった点(朝露の影響など)を明示する。
「朝は遅く午後は速い」は本当か
ゴルフ場では「朝のグリーンは重い」「午後は速くなる」という話をよく聞く。ところがUSGAの記述は、測定値の面では逆である。本稿が本文を確認できたUSGAのWest Region記事(2017年)は、午後のグリーンは朝より遅くなると予想してよいとし、数千回のスティンプメーター測定から、天気にかかわらず、ほとんどの場合、速度は1日を通じて遅くなっていくと述べている。ただし、午後のグリーンが速く感じられることはありうる。この食い違いを、確認できた資料の範囲で整理する。グリーンの速さを作る要因(刈高・ローリング)は別記事、測定器はスティンプメーターの仕組みで扱う。
測定値としては、なぜ午後に遅くなるのか
West Region記事は、午後に遅くなる要因として、芝の成長、ゴルファーの交通量、ボールマーク、サッチと有機物の戻り(朝の刈込み・ローリングの後)、湿度の上昇を挙げる。Green Section Record(61巻8号)も、成長しているグリーンは日中にわずかずつ遅くなるのは避けられないとし、管理者の目標は、過剰な成長で日中に大きく速度が落ちるのを避けることだと述べる。つまり、朝は刈込みとローリングの直後で表面が整っており、そこから時間とともに表面の状態が戻っていく、という図式である。
それでも午後に速く感じる理由
West Region記事の別の項目は、午後は低湿度・高温・日照・風でグリーンが硬くなることがあり、ゴルファーは硬いグリーンを速いと感じやすいと述べる。これは測定値ではなく、知覚の話である。「午後に速くなった気がする」という実感と、「測定すると遅くなっている」という数字は、両立しうる。なお、表面に水分が残っていれば、少量でも転がりは遅くなるとされる(Green Section Record 62巻12号)。
USGAが挙げる要因の整理
| 要因 | 測定上の速さへの向き | 出典・補足 |
|---|---|---|
| 芝の成長 | 遅くなる | 61巻8号。成長しているグリーンは日中にわずかずつ遅くなる |
| 交通量・ボールマーク | 遅くなる/滑らかさが落ちる | West Region記事。軟らかいほど影響が大きい |
| 湿度の上昇 | 遅くなる | 61巻8号。葉が水分を保持して転がりが重くなる。管理作業では対処できない |
| 日照・高温・風・低湿度 | 硬くなり、速く「感じる」 | West Region記事。知覚の話 |
どの程度の差なら気づけるのか
Green Section Record(61巻8号)は、平均的なゴルファーはスティンプメーターで6インチ(約15cm)未満の速度差を確実には見分けられないと述べる。このため、日中の低下が6インチ以内であれば、多くの人は午後の変化に気づかない可能性が高い。逆に、朝と午後で「全然違う」と感じる場合は、速度の変化以外に、硬さや凹凸の変化が効いている可能性がある。時刻別のスティンプ値の変化を数値で示した一次資料は、今回確認できなかったため、「何フィート遅くなる」とは書けない。
交通量とボールマーク:速度より「滑らかさ」
West Region記事は、午後の凹凸の主な原因は、ゴルファーの足跡と、正しく直されていないボールマークだと述べる。Green Section Recordは、交通量は特にグリーンが軟らかいときに滑らかさと直進性を落とし、サッチが多いと影響が大きいとする。これは速度というより、転がりの質の問題である。春の種子頭や、混在する草種による凹凸(Poa annuaなど)、芝目の影響は、本稿の範囲外とし、それぞれ別の話題として扱う。
測定する人の側の注意
「Details Matter When Measuring Green Speed」は、速度の測定は最後の表面管理作業から少なくとも30分あけ、表面の水分が少ない状態で行うのが望ましいとする。刈込みやローリングの直後に測ると、数値は過大になり、少量の水分でも転がりは遅くなる。毎回同じ場所で測ることも勧められている。つまり、「朝に測った値」と「午後に測った値」を比べるには、作業からの経過時間と水分の条件をそろえる必要がある。ラウンドする側にできるのは、朝のパットの感覚だけでグリーンを決めつけず、数ホールのうちに自分のタッチを調整することだろう。速さの違いがパットの曲がりと距離感にどう効くかは、パットの転がりの物理やAimPointの記事で扱っている。
本稿で確認できなかったこと
- 朝露(dew)そのものがボールの転がりに与える影響を扱ったUSGAの記述。確認できたのは、少量の表面水分でも転がりが遅くなるという一般的な記述まで。
- スティンプ値の時刻別の変化を示す数値。
- 風や芝目が時間帯で変わることについてのUSGAの記述。
- 日本のグリーン(高麗芝・ベント)での時間帯変化のデータ。
出典
- USGA West Region「Eight Reasons Why Putting Greens Play Differently In The Afternoon」(2017)
- USGA Green Section Record 61巻8号「Why Do Putting Green Conditions Change Throughout the Day?」
- USGA Green Section Record 62巻12号「Details Matter When Measuring Green Speed」
(いずれもUSGAのサイトに直接はアクセスできず、Internet Archiveの保存版で本文を確認した。)
よくある質問
- 午後のグリーンは速くなりますか、遅くなりますか?
- USGAの記事では、数千回の測定から、ほとんどの場合、速度は1日を通じて遅くなるとされています。一方、午後は硬くなりやすく、硬いグリーンは速く感じられやすいとも書かれています。
- 朝のグリーンが重く感じるのは露のせいですか?
- 露を単独で扱ったUSGAの記述は確認できませんでした。確認できたのは、少量の表面水分でも転がりが遅くなること、湿度が高いと葉が水分を含んで転がりが重くなること、までです。
- 朝と午後の速さの差は気づけますか?
- USGAの記事は、平均的なゴルファーはスティンプメーターで6インチ未満の差を確実には見分けられないと述べています。
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