戦略と統計の原理/原理解説
パー3で番手が足りなくなるのはなぜか——距離帯別のパーオン率と「手前に外す」データで考える
パー3は最も短いのにスコアが伸びにくいホールである。Shot Scopeの距離帯別パーオン率、Arccosの「50%の距離」と手前に外れる割合の公表値を、標本と条件つきで整理し、番手選びの考え方と確認できなかったことを示す。
パー3は、パーの数字だけを見れば「最も短いホール」である。しかし、短いのにスコアが伸びない、と感じるゴルファーは多い。本稿は、Shot ScopeとArccosが公表している数字から、パー3で何が起きているかを、距離帯と「ショート」の観点で整理する。両社のデータは自社の計測製品のユーザーから集めた企業発表であり、ゴルファー全体を代表するとは限らない。パーオン率をハンディ別に並べた整理は既存記事(アマチュアのミス分布)にあるため、本稿では「距離帯」と「外す方向」に絞る。
要約
- Shot Scopeの公表値(15ハンデ)では、パー3のパーオン率は100〜150ヤードで37%、150〜200ヤードで20%、200ヤード超で7%。パー3の平均スコアは3.9で、パーよりボギーの方が出やすいと同社は書いている。
- Arccosの公表値では、グリーンに乗る確率が約50%になる距離は、ハンデ20で92ヤード、15で110ヤード、5で147ヤード、スクラッチで165ヤードとされる。
- Arccosの600万ショット超の分析(2017年、WSJ報道をArccosが紹介)では、アプローチの40%がグリーン手前に止まり、奥に行くのは約5%(手前は奥の8倍)とされる。パー3に限った数字ではない。
- 「番手が足りなくなる」原因として、ベストショットの距離で番手を選ぶ傾向が指摘されている。ただしこれは企業側の説明であり、因果を検証した研究は確認できなかった。
1. 距離帯別のパーオン率:Shot Scope
Shot Scopeのブログ「Play Smarter with 'Radar' – Par 3s」は、15ハンデを主な対象に、パー3の距離帯別のパーオン率を示している。同社データベースは「3億5000万ショット超」と記されている(公表日の記載は確認できなかった)。
| パー3の距離帯 | パーオン率(15ハンデ) |
|---|---|
| 100〜150ヤード | 37% |
| 150〜200ヤード | 20% |
| 200ヤード超 | 7% |
同じ記事は、15ハンデのパー3の平均スコアを3.9、平均寄りを57フィートとしている。6フィート以内に寄らなければ2パットになる、という趣旨で、パーオン後の2パットもパーの条件になる。同社の20ハンデのページでは、パー3の平均スコアが4.0、全体のパーオン率が16%と書かれている。
ここで注意したいのは、距離帯が「ティーからピンまでの距離」なのか「グリーン中心まで」なのか、ページの本文だけでは分からない点である。本稿は記事の表現どおり「パー3の距離帯別」と書く。
2. 「50%の距離」はハンディでこれだけ違う:Arccos
Arccosのブログ(2024年10月22日)は、グリーンに乗る確率が約50%になる距離を、ハンディ別に公表している。
Shot Scopeの「15ハンデは100〜150ヤードで37%」とArccosの「ハンデ15で110ヤードが50%」は、距離が伸びるほど率が下がるという方向では矛盾しない。ただし、両社は対象、集計の定義、ハンディ指数の扱いが違う可能性があり、数字を直接つなぐことはできない(本メディアの読み)。いずれにせよ、中ハンデの打ち手がパー3でピンを直接狙える距離は、思ったより短い、というのが両社の数字からうかがえる共通点である。
3. 外れるとき、どちらに外れるか
Arccosのブログが紹介する2017年のWall Street Journalの報道(600万ショット超、Arccos記録)では、アプローチショットの結果は次のとおりとされている。
- グリーン手前に止まる: 40%
- グリーンに乗る: 37%
- 左に外れる: 9%、右に外れる: 10%
- 奥に外れる: 約5%(手前は奥の8倍)
この数字はパー3だけでなく、全アプローチの集計である(ハンディの内訳は確認できなかった)。それでも、外した場合の最頻パターンが「手前」であることは、「番手が足りない」という実感と整合する。ブログの本文は、ゴルファーが平均ではなくベストショットの距離で番手を選びがちだと説明しており、12ハンデの例として、9番アイアンで150ヤードを期待して20ヤード短くなる場面が紹介されている。これは1人の例である。
なお、Arccosの別のページは、5番アイアンでの平均距離と中央値の差などを示しているが、列の定義(何を指す「平均」「中央値」か)が本文から判別できなかったため、本稿では数字を採用しなかった。
4. 試算:パーが取れる確率の上限
以下は、Shot Scopeの公表値を使い、本メディアが置いた仮定で計算した試算であり、出典のある結果ではない。仮定は、(a)パーオンした場合は常にパー以上、(b)パーオンしなかった場合のパー(寄せて1パット)の確率を、パー3でグリーンを外した場合のアップ&ダウン率34%(15ハンデ)で置く、の2つである。
- 100〜150ヤード: 0.37+0.63×0.34=約0.58(上限)
- 150〜200ヤード: 0.20+0.80×0.34=約0.47(上限)
パーオンしても3パットでボギーになる場合があるため、実際の確率はこれより低い。パー3の平均スコア3.9と合わせると、「パーを取るのは半分に満たないホールが多い」という程度が妥当と考えられる。
5. 番手の考え方:確認できた範囲での整理
- 自分の「ベスト」でなく、「平均」のキャリーを基準に考える。ショットの散らばりを含めた番手構成は番手の距離ギャップで扱っている。
- 手前に外れた場合の状況(バンカー、池、傾斜、花道の有無)と、奥に外れた場合の状況を比べ、外しても困らない側を決める。考え方はピンを狙わない勇気、期待打数の枠組みはDECADEの記事にある。
- グリーンの手前を外した場合のアップ&ダウン率は、25ヤード以内が43%、25〜50ヤードが16%(Shot Scope、15ハンデ)と、距離で大きく変わる。手前に外すにしても、グリーンに近い側に外す方がリカバリーしやすい。
- 打ち上げ・向かい風などの補正は風・高低差・ライで距離が変わる理由を参照。距離計の使用範囲は、規則4.3(同記事で確認)の内容に従う。
6. データの限界と、本稿で確認できなかったこと
- 両社のデータは自社ユーザーの集計で、標本の偏りは不明。
- Shot Scopeの距離帯別パーオン率の「距離」が、ティーからグリーン中心かピンまでかは本文では明確でない。
- 「80ヤードのショート率(20ハンデで38%など)」という数字は検索結果の要約でしか確認できず、本稿では採用しなかった。
- パー3に限った「手前・奥・左右」の外れ方の内訳。
- ハンディ別・距離帯別の、パー3のパー率の実測値。
- 「ベストショットで番手を選ぶ」ことが、手前に外す原因だという因果の検証。
参考文献・出典
- Shot Scope. Play Smarter with 'Radar' – Par 3s(企業発表。3億5000万ショット超とされる)。https://shotscope.com/blog/inside-the-ropes/expert-insight/par3s-radar/
- Shot Scope. Reduce your Handicap – 20hcp Law of Averages(企業発表)。https://shotscope.com/blog/practice-green/game-improvement/reduce-your-handicap-20hcp-averages/
- Arccos Golf. Your Chances of Hitting The Green Might Be Lower Than You Think!(2024年10月22日、企業発表)。https://www.arccosgolf.com/blogs/community/from-this-distance-you-have-a-50-chance-of-hitting-the-green
- Arccos Golf. The Wall Street Journal Takes a Deep Dive Into Why Golfers Overestimate How Far They Hit the Ball(2017年5月18日)。https://www.arccosgolf.com/blogs/community/wall-street-journal-takes-a-deep-dive-into-why-golfers-overestimate-how-far-they-hit-the-ball
- 本メディア「アマチュアのミス分布」「番手の距離ギャップ」「ピンを狙わない勇気」「DECADEの記事」。
第4章の試算は、本メディアが仮定を置いて計算したもので、出典のある結果ではない。図1・図2は出典の数値をそのまま描いた。
関連記事:散布から考えるティーショットの落とし所。
よくある質問
- パー3の距離帯でパーオン率はどれくらい変わりますか。
- Shot Scopeの公表値(15ハンデ)では、100〜150ヤードで37%、150〜200ヤードで20%、200ヤード超で7%です。企業が自社ユーザーから集計した値で、標本数や公表日は確認できませんでした。
- パー3で手前に外す人が多いのは本当ですか。
- Arccosが紹介する600万ショット超の分析(2017年)では、アプローチの40%が手前に止まり、奥は約5%とされます。パー3に限った数字ではなく、ハンディ別の内訳も確認できていません。
- 番手を上げれば解決しますか。
- 本稿では、番手を上げれば解決するという根拠は確認できていません。ベストではなく平均の距離で考えること、外しても困らない側を決めることが、確認できた資料から言える整理です。
- アプリや距離計は必要ですか。
- 必要という根拠は本稿では示していません。距離計の使用範囲は規則4.3の内容に従います。
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