原理原則ゴルフ

弾道の物理原理解説

打ち出し角とキャリーの関係——なぜ最適弾道が存在するのか

「打ち出し角を上げれば飛ぶ」わけではない。空気抵抗とバックスピンによる揚力という二つの力がせめぎ合う中で、なぜキャリーを最大化する「最適弾道」が存在するのかを、放物運動の基本原理から解説する。

監修・執筆:原理原則ゴルフ編集部編集部

真空中なら45度、しかし現実のボールは違う

物体を投げたときに最も遠くまで飛ぶ打ち出し角は、空気抵抗のない理想的な条件(真空中の放物運動)では45度であることが、力学の基本として知られている。しかし現実のゴルフボールは空気中を飛ぶため、この単純な計算はそのまま当てはまらない。空気抵抗(ドラッグ)を考慮した放物運動の数式は、真空中のように簡単には解けない複雑な形になり、初速や条件によって最適角度は45度から大きくずれることが、力学的に知られている。

ゴルフボール特有の変数——バックスピンによる揚力

ゴルフボールの場合、話はさらに複雑になる。単純な放物運動と異なり、ゴルフボールにはインパクトで生じるバックスピンがあり、これが飛行機の翼と同様の原理(マグヌス効果)で揚力を生み出す。バックスピンによってボール上面と下面の空気の流速に差が生まれ、上面側の圧力が下がることで揚力が発生し、ボールを長く空中に留まらせる。つまりゴルフボールの飛距離は、打ち出し角・初速・スピン量という3つの変数が互いに絡み合いながら決まる現象であり、「打ち出し角だけを上げれば遠くに飛ぶ」という単純な話ではない。

なぜ「最適弾道」が存在するのか

この3変数の絡み合いから、キャリーを最大化する最適な組み合わせが存在するとされる。打ち出し角が低すぎたりスピン量が少なすぎたりすると、ボールは十分な揚力を得られずに早く失速し、キャリー不足に陥る。逆に打ち出し角が高すぎたりスピン量が過多になったりすると、ボールは高く舞い上がるものの空気抵抗を受ける時間が長くなり、いわゆる「吹け上がり」(ボールが失速して距離を落とす現象)を起こす。弾道計測器メーカーのTrackManをはじめとする各社は、プレーヤーのヘッドスピードに応じて、キャリーを最大化する打ち出し角とスピン量の組み合わせ(最適化された打ち出し条件)を提示しているとされる。この「低すぎても高すぎても損をする」という構造こそが、最適弾道が存在する理由である。

スイング改善への示唆

この原理を踏まえると、ドライバーの飛距離を伸ばしたい場合、単にヘッドスピードを上げるだけでなく、アタック角(インパクト時にクラブヘッドが上昇軌道か下降軌道かを示す角度)をアッパーブロー方向に調整して打ち出し角を高め、同時にスピン量を抑えることが有効な場合がある——これはインパクト時のクラブヘッドスピード・アタック角・スピンロフト・ダイナミックロフト・スピン軸という5つの変数の考え方とも重なる。弾道計測データを見る際は、打ち出し角とスピン量のどちらか一方だけでなく、両者の組み合わせがキャリーに与える影響を合わせて捉えることが、原理に基づいた弾道改善につながる。

よくある質問

打ち出し角は高ければ高いほど飛びますか?
いいえ。打ち出し角が高すぎるとスピン量とのバランスによっては「吹け上がり」が生じ、かえって空気抵抗を受ける時間が長くなって距離を落とす場合があります。打ち出し角とスピン量の組み合わせで最適なバランスが存在するとされています。
なぜ真空中の物理計算(45度)はゴルフに当てはまらないのですか?
現実のゴルフボールは空気抵抗を受けるうえ、バックスピンによる揚力(マグヌス効果)という真空中の放物運動にはない力が働くため、単純な放物運動の公式とは異なる振る舞いをするとされています。