コース設計の原理/原理解説
なぜオールドコースは「設計されていない」のか——自然発生的ルーティングの原理
世界中の名コースの多くが特定の設計家の名前とともに語られる中、セント・アンドリュース オールドコースだけは「誰が設計したか」がはっきりしない。羊の放牧や地形の制約から自然に生まれたとされる、ダブルグリーンという特異な構造の成り立ちから、意図的設計と自然発生という2つの原理を対比する。
特定の設計家を持たないコース
本記事で紹介してきた廣野・オーガスタ・パインバレーなどの名コースは、いずれも特定の設計家の意図が明確に語られる。しかしセント・アンドリュース オールドコースは異なる成り立ちを持つ。一人の設計家が一から作り上げたのではなく、何世紀にもわたる利用と自然の作用を通じて、現在の姿へ少しずつ変化していったと広く語られている。羊がコース上で放牧されていた時代、羊やウサギの群れが風を避けて休む窪地や、餌を求めて掘った巣穴が、後のバンカーやグリーン周辺の起伏の原型になったとする説が伝えられている(羊は1940年代までコース上に残っていたとされる)。
7つのダブルグリーンが生まれた地理的必然
オールドコースを特徴づけるダブルグリーン(1つのグリーンに2つのホールのカップを配置する構造。現在7つが残る)も、意図的な設計というより地理的な制約から生まれたとされる。コースが海岸沿いの狭い帯状の土地に沿って一本道のように発達したため、行き(アウト)と帰り(イン)で同じ土地を共有せざるを得ず、19世紀にゴルフ人口が増加して混雑が課題になった際、1つのグリーンに2つのカップを切ることで往復のプレーヤーが安全にすれ違えるようにしたという経緯が伝えられている。
意図的設計と自然発生、2つの原理
この成り立ちは、コース設計を捉える上で重要な対比を示している。マッケンジーやアリソンら20世紀の設計家たちは、まさにこのオールドコースの戦略性を分析し、テンプレートホールという形で意図的に再現しようとした。つまりオールドコースは「模倣される側」の原型でありながら、それ自体は模倣ではなく自然発生的に育ったという、設計史上でも特異な位置づけにある。現代のコース設計が「いかに自然に見えるよう作り込むか」を追求するのに対し、オールドコースは文字通り自然の作用と人間の利用の積み重ねでその戦略性を獲得したという点で、両者は対照的な原理に立っている。
よくある質問
- オールドコースには設計家がいなかったのですか?
- オールド・トム・モリスがグリーンキーパーやコース管理者として長年にわたりコースの整備・改良に関わったことは知られていますが、特定の一人が一から設計したのではなく、何世紀にもわたる自然発生的な変遷を経て現在の姿になったと広く語られています。
- ダブルグリーンは今でも他のコースで見られますか?
- ダブルグリーンはオールドコース特有の構造として知られており、他のコースで採用される例は多くありません。往復のプレーヤーが同じ土地を共有せざるを得なかった地理的制約から生まれた、オールドコース固有の解決策とされています。
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