コース設計の原理/原理解説
なぜコース設計には「型」があるのか——テンプレートホールとストラテジック設計の原理
レダンに代表される「テンプレートホール」と、ペナル・ストラテジック・ヒロイックという三大設計思想は、いずれもプレーヤーに何を試すかという一貫した哲学から生まれている。100年以上前の考え方が、今なお世界中のコースに息づいている理由を原理から解説する。
レダンというテンプレートホールの起源
世界中のゴルフコースを見ていくと、まったく違う土地に、驚くほど似た形状のホールが繰り返し現れることに気づく。左奥に向かって斜めに傾いたグリーンと、左側に口を開ける深いバンカー——これは「レダン」と呼ばれるテンプレートホールの典型的な形状で、原型はスコットランドのNorth Berwick Golf Club(West Links)の15番ホールにあるとされる。名称はクリミア戦争でイギリス軍がロシア軍の稜堡(redan)を攻略した戦史に由来する。この設計思想をゴルフ用語として広め、テンプレートとして世界中に広めた立役者がC.B. Macdonaldである。彼は自著『Scotland's Gift: Golf』でこの設計思想を紹介し、自らが設計したNational Golf Links of America(米ロングアイランド、1911年開場)の4番ホールでアメリカ初の「レダン」を再現した。以後Seth RaynorやCharles Banksらがこの型を各地のコースで繰り返し踏襲し、レダン・アルプス・エデン・ロードといった「テンプレートホール」の語彙が確立していった。
ペナル・ストラテジック・ヒロイック——三つの設計思想
なぜこうした「型」が生まれたのか。その背景には、コース設計をプレーヤーに何を試すかで分類する伝統的な三分法がある。
- ペナル設計——「正しいプレーの仕方は一つ」という思想に基づき、狙った通りのショットを打てば報われ、ミスは等しく罰せられる。身体的な実行力(スキル)を試す設計である。
- ストラテジック設計——複数のルート・攻め方をプレーヤー自身に選ばせる思想で、判断力(マインド)を試す。Macdonaldはまさにこの立場から、セント・アンドリュースやPrestwickの戦略性をアメリカに移植した張本人だった。
- ヒロイック設計——両者の中間に位置し、対角線状のハザードを直接越えるか安全に迂回するかをプレーヤーに迫ることで、挑戦する心(ハート)に訴える。
なお、この「三つの学派」という分類自体は複数のゴルフ専門メディアで広く用いられているものの、USGA等の一次公式文書での定義は確認できておらず、業界メディア発の分類として理解しておくのが安全である。
日本のコースに息づく設計思想
日本国内でも、C.H.アリソンが設計した廣野ゴルフ倶楽部のように、深いポットバンカー(アリソンバンカー)によって攻めるラインそのものを規定する、ストラテジック設計の系譜に連なるコースが存在する。テンプレートホールや設計思想の型を知っておくと、初めてラウンドするコースでも「このホールは何を試そうとしているのか」を事前に見立てやすくなり、無理な攻め方を避けてスコアを守る判断材料になる。
よくある質問
- レダンとはどんな意味ですか?
- 本来はクリミア戦争でイギリス軍が攻略したロシア軍の稜堡(防御陣地)を指す軍事用語です。パー3のグリーンが手前右側から左奥へ斜めに傾斜し、左側に深いバンカーを配する設計を指すゴルフ用語として、C.B. Macdonaldが広めたとされています。
- ストラテジック設計とペナル設計の一番の違いは何ですか?
- ペナル設計は「正しいプレー」がほぼ一つに定まり、ミスはひとしく罰せられます。ストラテジック設計はリスクとリワードの異なる複数のルートを用意し、プレーヤー自身の判断力を試す点が最大の違いです。
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