ゴルフボールの原理/変遷史
なぜTaylorMadeはボールに5層目を足したのか——TP5と「最適なスピン・打ち出し角」の追求
3層構造が主流だったツアーボール市場に、TaylorMadeは2017年、5層構造のTP5・TP5xを投入した。層を増やすことが、なぜ打ち出し角とスピン量の最適化につながるのかを解説する。
Project(a)から積み上げた開発の系譜
TaylorMadeのツアーボール開発は、2014年に投入された3ピース構造の「Project(a)」に一つの起点があるとされる。Project(a)は「ツアーレベルの性能を、手頃な価格帯の3ピース構造で実現する」という位置づけの製品で、2016年には低圧縮化によってグリーン周りのスピン性能を維持しながら打感を柔らかくする改良が加えられたと伝えられている。
2017年、5層構造の「TP5」「TP5x」へ
2017年、TaylorMadeは5層構造を採用した「TP5」「TP5x」を投入した。層数を増やす狙いは、ドライバー・アイアン・ウェッジそれぞれの局面で求められる打ち出し角とスピン量を、単一の構造では両立しにくい中で、層ごとに異なる硬度・素材を配置することでより精緻に制御することにあるとされる。発売から間もない2017年6月時点で、世界トップ6選手のうち4人が新型のTP5またはTP5xを使用していたと報じられている。
Project(a)へのフィードバック
TP5の設計で得られた知見は、下位モデルであるProject(a)にも還元された。2018年には、TP5・TP5xと同じ322個のディンプルパターンをProject(a)にも採用することで、より空力的なディンプル配置による飛距離向上を図ったとされる。フラッグシップモデルで培った技術を廉価モデルへ展開するという開発の流れは、TaylorMadeのボールラインナップ全体の性能底上げにつながっている。
関連記事:Pro V1がツアーボール市場を変えた経緯。
よくある質問
- TP5はなぜ5層構造なのですか?
- ドライバー・アイアン・ウェッジそれぞれで求められる打ち出し角とスピン量を、層ごとに異なる硬度・素材を配置することでより精緻に制御する狙いがあるとされています。2017年に投入されました。
- Project(a)とTP5はどういう関係ですか?
- Project(a)は2014年発売の3ピース構造モデルで、TP5の廉価版に位置づけられます。2018年にはTP5と同じ322個のディンプルパターンが採用されるなど、フラッグシップモデルの技術が還元されています。
関連記事
- なぜPro V1は発売週に47人のツアープロを転向させたのか——ツアーボール市場を変えた4日間
2000年10月、ラスベガスで開催されたPGAツアー1試合の間に、47人の出場選手が一斉に新型ボールへ切り替えるという、用具史上でも異例の出来事が起きた。Titleist「Pro V1」が「飛距離」と「フィール」のトレードオフをどう崩したのかを解説する。
- ゴルフボールの選び方——スピン・コンプレッション・カバー素材と、ディスタンス系・スピン系の基準
スピン、コンプレッション、カバー素材、構造の4つの基準で、ディスタンス系とスピン系のボールを整理する。ヘッドスピードの目安は一次資料のある範囲に限る。
- なぜコストコの15ドルボールはタイトリストを本気にさせたのか——カークランド特許戦争の顛末
2016年、コストコのプライベートブランド「カークランド・シグネチャー」が投入した4ピース・ウレタンカバーのツアーレベルボールは、わずか1ダース15ドルという価格で瞬く間に品切れとなった。この「安すぎるツアーボール」がどのようにして業界最大手との特許紛争に発展したのかを追う。
- AVXとPro V1、Pro V1xは何が違うのか——タイトリスト3兄弟の弾道特性
タイトリストのツアーボールはPro V1・Pro V1xだけではない。2018年に加わった「第3の選択肢」AVXは、何を狙って設計されたボールなのか。3モデルの位置づけの違いを整理する。
- 2ピース・3ピース・4/5ピース、ボール構造の違いはスコアに出るのか——ロボットテストで比較する
ピース数(層の数)が多いほど「ツアー向け」とされがちだが、実際のロボットテストデータはどう物語っているのか。飛距離・スピン・安定性の3軸で、構造別の特性差を比較する。
関連コンテンツ